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zoom RSS EOS社の3Dプリンター(レーザーシンタリング造形法)によるブリッジフレームのテストケース(最終回)

<<   作成日時 : 2014/10/15 23:42   >>

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EOS社の3Dプリンター(EOSINT M270)によるレーザーシンタリング造形に必要な時間は、クラウン1個あたり平均約6分です。
したがって、今回のテストケースに用いた上顎7−7のブリッジフレームは約1時間半で造形されたことになります。
実際は、金属製の造形用ベースプレートに多数のクラウンやブリッジフレームが配置され、夜のうちにまとめて造形されます。
Lラボの日常臨床ケースに多用されている造形用ベースプレートには約150〜200個のクラウンが配置できます。
さらに、その倍の広さの造形用ベースプレートもあり、これを使えば300〜400個のクラウンを一度に造形することもできます。

この金属の造形用ベースプレートは、造形時には常時80℃を保つように裏面から加熱されています。
1500℃のレーザビームで焼結された造形物が急激に冷却することを防ぐための処置だそうです。
一般的に、焼結積層造形法では、造形時に部分的な温度差が生じると造形物に応力が残留すると言われています。
そのために専用のファーネスを用いて、造形時に生じた応力を解放するための熱処理が必要となります。
このように2回にわたって熱が加えられますので、精密鋳造法にも見られるように、熱による影響は避けられないようです。

本記事では、上顎7−7のブリッジフレームの適合テストについてご報告します。
今回のテストでは、CADにおける操作や画像データについては従来の方法で行い、一切変更を加えていません。
それらの画像データがCAM装置へ送られてからの処理、特に「ブリッジフレームの配置方法が適合精度に与える影響」についてテストすることにしました。

まず、現在Lラボで行われている方法でテストしました。
EOSINT M270の装置が導入された際に、ドイツ人技師によって指導された方法だそうです。
私自身、その方法に以前より疑問を感じていたのですが、テストの結果は想像していたとおりでした。
上顎7−7のブリッジフレームは見事に変形しました。
先に行った6歯ブリッジのテストでも変形が見られたのですが、それと同じように前歯部分を指で押しますと最後臼歯部分が浮き上がり、大きくピッチングします。
その状態は下図のとおりです。

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そこで、私の考えで配置法を変えてみました。
まず自作のメジャーをディスプレイの画像上に当てながら、ブリッジフレームが造形用ベースプレートの表面に出来るだけ水平になるように配置してみました。

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たったこれだけのことですが、結果は全く変わりました。
肉眼で見る限り、適合精度に問題はなくなりました。

唇頬側面から見た適合状態です。

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口蓋側から見た適合状態です。

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但し、完璧な結果が得られたわけではありません。
肉眼ではマージン部における適合は問題ないように見えますが、前歯部分に圧をかけますと、最後臼歯部の咬合面部に置いた指にかすかな動きを感じます。
歯科技工士であれば、ブリッジの適合をチェックする際に誰にも経験があるあの微妙な感触です。

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ブリッジの変形や不適合に関しては、確かに改善が見られたのですが、やはり、6歯ブリッジのテストの際に生じた問題点がこのテストケースでも生じました。
それは、内面調整の際に多くの時間がかるという問題です。
特に、前歯切端部の当たりが強く、調整に手間取りました。

素人考えですが、この原因は、ブリッジフレームを配置した際の方向や角度の影響によって、CADから送られたデータの一部が読み込めず、そのための誤差が生じてクラウンの内面の形態が変形しているのではないかと思われます。
しかし、方向や角度を変えてクラウンの内面にCAD装置のスキャナーの光が十分にあたるように設定しても同様な問題が生じましたので、それだけの問題ではなさそうです。
CAM装置における何か根本的な問題もあるように思われましたので、EOS社にEOSINT M270の検査と調整を依頼することになりました。
すでに数日前に、EOS社から下図のように梱包された調整用の機材が届きました。
来週には、EOS社から技術者が来られて、3日間かけて検査と調整をされる予定になっています。

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結局、私が行ったテストからは決定的な解決策は得られませんでした。
しかし、適合テストの結果を示すことができましたので、従来の方法に問題があること、および、EOSINT M270装置の検査と調整が必要であることをCAD/CAM部門の担当者だけでなく上層部にも理解してもらえたように思います。
EOSINT M270装置の調整が終わった後に、再度、ブリッジフレームの適合テストを行うつもりにしていますので、その結果は、改めてご報告したいと思います。

今回は、EOS社の3Dプリンター(レーザーシンタリング造形法)がどのようなものなのか、その概略を知っていただくために、2〜3回の連載でご報告するつもりでしたが、書き足していくうちに10回の連載となってしまいました。
自分が見たことや聞いたこと、あるいは経験したことをありのままに書いた記事ですが、お読みいただいた方々のお役に少しでも立てれば幸いだと思っています。

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コメント(2件)

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素晴らしい!
ありがとうございます<m(__)m>
としじい
2014/10/16 10:39
としじいさんへ

いつもコメントをいただきありがとうございます。
おかげさまで、LラボのEOSに関する技術もほとんど安定してきました。
最近は中国の国外からも、設計された画像資料だけが毎日Eメールで送られてくるようになりました。
それをもとにコバルトクロムによるコーピングやブリッジフレームの製作が行われています。
日本で将来、もし歯科用金属がコバルトクロムに代わるようなときがくれば、中国ラボのEOSも日本のラボによって利用されるときがくるかもしれないと思っています。
時代とともに、私たちの手工業的な技工技術も、いやおうなしにCAD/CAMを応用した技術に変わっていくようですね。

王譯平
2015/06/24 21:28

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