流浪の歯科技工士・王譯平・・・老馬之智

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zoom RSS 石膏による歯形彫刻が嫌いだった中国の実習生たち

<<   作成日時 : 2015/06/21 00:36   >>

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16〜7年ほど前になりますが、東京にあるT歯科医療専門学校で専攻科のための非常勤講師を引き受けたことがあります。
といっても、年間3〜4日だけの特別講義と実習による授業です。
当時、私のラボにあったドイツ・カボ社製の咬合器8台をすべて持参し、学生に咬合器を操作させながら咬合に関する授業を行いました。
専攻科の2年生のための授業で、卒業まで余すところ半年程の頃だったと記憶しています。
授業の最終日に担任の先生から相談を受けました。
私の講義を受けた女子学生3名が、放課後に私のラボで勉強したいと言っているが可能だろうかという話でした。
バイトのためではなく、勉強したいという純粋な考えですのでお願いできませんかとのことでした。
彼女たち本人からの熱心な申し出にも心打たれ、引き受けることにしました。
輝いている若い彼女たちの瞳に心魅かれたからなのかもしれません。

彼女たちは学校の授業が終わった後、毎日、5時頃には私のラボに着き、4時間ほど私のラボで私の仕事を手伝いながら、メタルボンド・ブリッジの製作法や咬合の勉強をすることになりました。
そして、約3ヵ月が過ぎたころ、彼女たちは専門学校の専攻科を卒業してそれぞれの道へ進むことになりました。
一人はオーストラリアのラボに勤務するため、日本を離れました。
他のひとりは実家がある都市の歯科医院で働くことに決めました。
残る一人は私のラボに勤務することになり、その後、私がラボを閉鎖するまで、約8年間私のラボで働いてくれました。
私の心の支えにもなってくれた3人の女子学生たちです。

中国に来ても、20歳代の若い実習生を見ると、つい、日本で出会った3人の女子学生たちのことを思い出します。
彼女たちのように、中国の若い実習生も瞳が輝いているからです。
自分の将来に希望を持ち、また、少しだけ不安を抱いている心の証のように私には見えます。

下記のURLにも書きましたように、中国では専門学校や大学の3年生になるとラボで10ヵ月間の実習を受けなければならないようになっています。
http://xiaolong1017.at.webry.info/201504/article_1.html
実習生にとって実習の受け入れ先ラボは、自分の将来の職場になる可能性がある場所ですので、就職先を決める場合のように慎重に選んでいるようです。
また、受け入れられた後は、ラボ内で試験や面接があり、その結果で実習部門が決定されます。
例えば、実習生たちの希望が最も多いというCAD/CAM部門で実習が決まれば、約10ヶ月間はそこで実習を受け、卒業後もその部門で働くことができるようになります。
しかし、ラボ内の試験や面接によって評価が悪く、ラボにとって有益な人材でないと考えられれば、誰もが短時間で技術を習得できるような単純な技術の部門へ配属されます。
そのような部門へ配属された実習生は、例え卒業して他のラボに就職したとしても実習した部門や経験を問われることになります。
本人がよほど努力して自分の実力を証明しないかぎり、自分が希望する部門へ配属されることは難しいでしょう。
そのため、中国におけるラボ内の試験や面接は、若い実習生の将来を奪う可能性がある、ある意味で冷酷ともいえる牙科技師(歯科技工士)のための登竜門といえるように思われます。

弊社Lラボでもラボ内の試験では、歯形彫刻と筆記試験、および、担当者による面接が行われています。
3月に採用された実習生の試験時の歯形彫刻とその後に私の研修を受けた際のワックスアップを見てください。
大連医科大学本科口腔修復工芸科3年生の女子学生3名のケースです。
いずれの学生も石膏による歯形彫刻が嫌いで、手先が不器用だからと言っていたのですが、機能的なワックスアップをさせながら、咬合理論にそって咬合を作る方法を指導しますと、かなりレベルが高いクラウンの形態を作ることができました。
彼女たちは石膏による歯形彫刻は苦手だったのでしょうが、中国の国立大学に入学できる学力を備えているだけあって、理論面での理解度のレベルは決して低くはないと思いました。

馬金影(マ・ジンイン)の試験時の歯形彫刻と研修後のワックスアップです。
彼女はCAD/CAM部に配属が決まりました。

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崔巧情(ツァイ・チアオチン)の試験時の歯形彫刻と研修後のワックスアップです。
彼女は精密技工部に配属が決まりました。

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遅浩(チィ・ハオ)の試験時の歯形彫刻と研修後のワックスアップです。
彼女は品質管理部に配属が決まりました。

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彼女たちが実習生として採用された3ヵ月後の6月初旬に、Lラボにおいて歯形彫刻の社内コンテストが催されました。
今年は、技工物製作に携わっている社員の3分の1にあたる70名が参加しました。
私と他の4名が作品の審査を行いました。
最高は100点で、審査員全員の点数を平均して順位が決まるとのことです。
私は最も良いレベルの作品を90点レベルとして、以下80点レベル、70点レベルなどグループをつくり、最低は10点レベルとしました。
その結果、90点レベルは8名、80点レベルは5名と判断しました。
白い枠内が90点と80点レベルの作品です。
白い矢印にしたがって技術レベルが劣った作品となっています。
赤い枠内は20点と10点レベルの作品です。

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私の研修を受けた実習生の遅浩(チィ・ハオ)も参加し、私の評価の80点レベルに入っていることを審査後に聞きました。
遅浩(チィ・ハオ)の試験時の歯形彫刻です。

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遅浩(チィ・ハオ)の社内コンテスト時の歯形彫刻です。

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本人も努力したのでしょうが、試験時の歯形彫刻とコンテストで製作した歯形彫刻とでは雲泥の差があります。
わずか3ヵ月の期間でこのように歯形彫刻の技術が上達するとは思いませんでした。
石膏の歯形彫刻に関して私は全く指導を行っていませんが、本人は歯形彫刻も好きになったと言っています。
瞳に輝きがある若い実習生は多くの可能性を秘めていることを改めて知らされました。

日本では、就業歯科技工士約35,000人のうち、25歳未満の若い歯科技工士はわずか6%だとのことですが、中国では多くのラボが20歳代の若い人たちで支えられているようです。
http://hotetsu.com/s/doc/irai2014_4_09.pdf

Lラボには、新たに3カ所の歯科技工専門学校から合計50数名の実習生を受け入れるように依頼が来て、7月にはその実習生たちが全員入ってくるそうです。
6人単位で行う咬合に関する私の研修もすでに計画されています。

若い実習生たちに歯科技工の楽しさを教え、彼らの瞳の輝きを消さないようにしなければと思っているところです。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは、王先生。
これって画期的な研修ですね。道理です。
生徒が入りやすいソフトな材料を使って28本の歯の形態並びに顎口腔の関係を咬合器を使って頭の中に刷り込ます。
その生徒は先生が思った以上にやる気があったので頭の中のそのイメージが固まりハードな素材でもできちゃったパターンですね。生徒が楽しめているかがキーポイントですよね。
そのネタ参考にします。
ではまた、健康にはお気をつけて。
Hiro Takada
2015/06/21 12:20
Hiro Takada さんへ

コメントありがとうございました。
そちらはそろそろ冬の季節なのでしょうか?
おっしゃる通り、若い学生たちが研修をとおして歯科技工が楽しいと感じてくれたら、その研修の目的は達したようなものだと思っています。
研修では、手取り足取りで細かく教える必要はないと思っています。
理論が伴った適切なヒントを与えて、少しでも変化があれば、とにかく褒めて認めてあげるのが若い人達を指導するうえで最も重要なことのように最近は感じています。

王譯平
2015/06/22 15:06

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