流浪の歯科技工士・王譯平・・・老馬之智

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zoom RSS 大連市の歯科技工士学校における講義をとおして考えたこと

<<   作成日時 : 2016/06/06 00:19   >>

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中国では歯科技工士を養成するための学校が増え続けているそうです。
すでに400校ほどあるといわれますが、正確な数字は弊社Lラボの王社長も把握していないようです。
歯科技工士は、医科大学、医療技術専門大学、職業技術専門学校などの口腔修復工芸科で3年から5年をかけて養成されますが、最近は応募者が多く人気のある科目のひとつだそうです。

2ヶ月ほど前になりますが、王社長と二人だけで日本へ行き、東京を中心とした5ヵ所のラボと1か所の歯科医院を見学させていただきました。
その際に聞いた友人の話が妙に私の心の片隅に残ったままでいます。

彼は寂しそうに私に言いました。
「私が勤めていた歯科技工士学校では、今年の入学者は3人だけでした。教師は10人位いるのですが・・・国立だからやっていけるのでしょうけど・・・」
現在の中国における歯科技工士学校とは違って、経営的に非常に厳しい情況であることが想像できました。

先月、大連市にある職業技術専門学校の口腔修復工芸科からの依頼で、王社長と一緒に講義を行ってきました。
その際に接した学生や若い教師の方々からは、日本の進んだ歯科技工の技術を学びたいという熱意と意気込みがひしひしと伝わってきたものです。

私の講義を聞く学生たちです。
私に依頼された講義のテーマは、
“日本における歯科技工士のための教育と弊社Lラボの研修センターにおける実技研修”でした。

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午後は、学生が製作した歯形彫刻などを見て技術指導をして欲しいとの依頼を受けました。
一学年50人ほどの学生たちで授業が行われていました。
彼らは今年の7月からラボにおいて実習生として技術を学び始めます。
弊社Lラボにはこの中から約20人の学生が実習生として来る予定になっているそうです。

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彼らの歯形彫刻は未熟なものでしたが、それぞれの学生に私なりのアドバイスを伝えてきました。

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技工の技術指導をされている若い女性教師の人達です。
左から2人目の方は医科大学本科を卒業されています。
大学の授業で日本語を専攻されたとのことで、彼女とは日本語による意思の疎通が可能でした。

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日本には30数年前から中国の歯科技工士を毎年1〜2人、自分のラボに留学させ、中国の歯科技工士教育に貢献されてこられた方がいます。
“コアデンタルラボラトリー横浜”の創設者で現会長の斎藤隆司氏です。
すでに、30数名以上の中国人歯科技工士の方々が彼のラボで学ばれたといわれます。
1970年代、歯科技工学校を卒業して間もない私にとっては斎藤氏は雲の上の人で、歯科技工雑誌に執筆された論文を拝読しながら、いつかお会いしたいものだと思っていた方です。

今年の4月に弊社王社長と一緒に“コアデンタルラボラトリー横浜”の見学をさせていただいたときの写真です。
中央が会長の斎藤隆司氏です。
右は弊社Lラボの王社長、左が私です。

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北京医科大学などの大きな病院の歯科技工室を訪問しますと、その部門の責任者の方から「私は日本で技工を学びましたので、日本語で少し話すことができます」と話しかけられます。
「どこで技工を学ばれましたか?」と質問しますと、決まって「横浜の斎藤さんのラボです」という答えが返ってきます。

大連市の大連市口腔医院を訪問したときも、インプラント技工部の主任をされている方から同じように話しかけられ、同じように「横浜の斎藤さんのラボです」という返事が返ってきました。
彼はまた、「今年の4月、斎藤さんのラボで学んだ仲間達十数人で、斎藤さんに会いにいきました。その際に、亡くなられた前社長の墓参りにも行きました。留学中は日本語も十分に話せなかったのですが、ラボの皆さんにとても良くしていただき、いつもその時のことを思いだし、励みにしています」と、今にも涙を流しそうな表情で話をされました。

右手前の白いビルが大連市口腔医院です。
ビル全体が歯科医院となっています。

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私にはどうしても納得できないことがあります。
日本の歯科技工専門学校を卒業し、日本の歯科技工士の国家試験にも合格して国家資格を得ていながら、日本の国籍を持たない中国人というだけで日本では歯科技工士として働くことができない人達がいるということです。
彼らは非常に悔しい思いをしながら中国へ帰ってきています。

彼らの親達は、日本の歯科技工専門学校を卒業するまでに400万円以上の学費や生活費を子供達に投資しています。
子供達もバイトなどして苦労しながら卒業しています。
それにもかかわらず、日本では歯科技工士としての労働許可が得られないということで、仕方なく中国へ帰ってきているのです。
中国では4年制の医科大学本科の口腔修復工芸科を卒業しても、初任給は1,700元(約28,000円)程度です。
たとえ日本の歯科技工専門学校を卒業し、日本の歯科技工士免許を取得したとしても中国では特別な待遇が得られるわけではありませんので、投資した金額の回収はできません。

日本に留学して歯科技工を学びたいという若い子たちは私のまわりにも沢山いますが、日本で歯科技工士として働くことができない現状ですので、私としては日本への留学を勧めるわけにはいきません。
もし、日本の国家資格を得た外国人が日本人と同じ条件で働くことができれば、中国やベトナム、タイ、フィリッピンなどアジアの国々からの留学生が増え、日本の歯科技工専門学校も新たな可能性と発展が期待できるのではないかと思っているのですが・・・。

日本歯科技工士会の理事をしている私の親しい友人にこのことを質問しましたところ意外な答えが返ってきました。
「実は、医療関係のほとんどの専門部門では、資格を得た外国人が日本で働くことができるようにはなっているのです。できないのは歯科技工士とあと一つの医療補助部門だけです。歯科技工士に関しては、何代か前の日本歯科技工士会の会長が猛烈に反対して決まったことであるため、その面子上、今も変えることができないでいるのです」とのこと。
おそらく当時は、上からの目線で、後進国だと思われる国々の歯科技工物や歯科技工士を排除したいという目先の事象だけを見ての判断だったのでしょう。

今月には日本歯科技工士会の新しい役員が決められるとのこと。
目先の事象や過去の面子にこだわって守りに徹するのではなく、「 攻撃こそ最大の防御 」だとの考えで、日本の歯科技工界のために新たな風を起こしていただきたいものだと思っています。
このような思いは私だけではないように思うのですが・・・。

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内 容 ニックネーム/日時
おひさしぶりです、王先生!今回もこれまで以上にショッキングな記事の内容ありがとうございます。先生の熱意は必ず日本歯科技工士会執行部に届きます。なぜなら、これらの問題はインターネットを通して進んだグローバルネットワーク進んだ先進国(G20、中国含む)の中では、一般論として、非常識です。もし、その執行部がその状況を見て見ぬふりをし続けるとすれば、日本の歯科のデジタル化そして国際化を妨げることになり、一般社会の方々から総スカンをうけることとなります。故に、先生の思いは近い将来、必ず実現します、それは多くの方々が国を超えて求めていることです。
Hiro Takada
2016/06/12 12:19
Hiro Takada さんへ
コメントありがとうございました。
最近は、弊社Lラボの見学を希望される日本のラボの方々が多くなりました。
私と王社長が見学させていただいた日本のラボのように、綺麗でも技術が優れているというわけでもありませんので気が引けるのですが。
でも、中国ラボやその技術に対する考え方が、10年程前とは違って、日本でも変わってきつつあるのかなとも感じています。
歯科技工の技術には国境はなく、メールでCADによる設計資料を送るだけで、どこの国でもCAMによる技工物の製作ができる時代です。
過去の考えに縛られた不要な規制はぜひ緩和していただきたいものだと思っています。
王譯平
2016/06/14 21:12

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