流浪の歯科技工士・王譯平・・・老馬之智

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zoom RSS 実習生たちによる初めての臨床ケース(臼歯部メタルボンド・クラウンの一例)

<<   作成日時 : 2017/07/02 17:45   >>

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中国では、職業訓練学校(3年制)、大学専科(3年制)、大学本科(4年制)などの学校に口腔修復工芸科(日本でいう歯科技工士科)が設けられています。
その総数は約350校にのぼると言われます。
それぞれの学校では2年間(大学本科では3年間)の教育が行われますが、教科書を用いた理論面の教育が主で、日本の歯科技工専門学校のような実習や実技指導は全くと言ってよいほどなされていません。
弊社Lラボの実習生たちに聞きましても、石膏棒を用いた歯形彫刻を2〜3個製作したにすぎず、ワックスアップの経験すらないと言います。
現在、川崎歯科技術研修センターで私が指導している実習生17名も例外ではありませんでした。
中国では、技術実習は学校では行われず、1年間の実習期間中に、実習先のラボで技術を教わることになっています。

私が若い頃は、“技術は見て覚えろ、見て盗め”“数多く作りさえすれば自然とうまくなる”などと言われたものです。
ある程度の基礎技術を持ち、良し悪しの判断ができる程度の知識があれば、そのような教育法もあるのかもしれませんが、中国の実習生たちには全く通用しません。
器具や材料の使い方も全く知りませんし、何が正しくて何が悪いのかもわかっていません。
そのため教えるにあったっては、理論的に説明しながら具体的な数値を示し、彼らの指の感覚や目に覚えさせることが必要になります。

例えば、クラウンの接触点を調整する場合は、12ミクロンの箔を使わせて引き抜きテストを行わせます。
そして、指に抵抗を感じながら、辛うじて引き抜けるように調整させます。
もし、箔が破れるようであれば、接触点がきつすぎるのだと教えます。
臼歯部の中心咬合位における咬合接触点に関しては、12ミクロンと9ミクロンの咬合紙を用いて調整させていますが、その後、最終的に40ミクロンの箔を使わせて引き抜きテストをさせ、指に抵抗を感じながら、辛うじて引き抜けるように調整させます。
前方運動時や側方運動時などでは、運動の初期段階で40ミクロンの箔が全く接触せずに引き抜けることを確認させます。

上記の例は、具体的な数値を示しながら彼らの指の感覚に覚えさせるためのほんの一例です。
また、製作方法をシステム化、単純化して、なぜそうしなければならないかという技術理論を理解させる必要もあります。
例えば、ポーセレンの築盛に関しても、どこにどのような色の陶材を、どの程度の厚さや幅で築盛するか彼らには全くわかりませんので、築盛法をシステム化して、築盛する厚さや幅も数値で示し、誰もが同じ方法で行い、同じような結果がでるようにする必要があります。

川崎歯科技術研修センターにおけるポーセレン築盛室です。
ポーセレンファーネス4台とポーセレンの焼成も可能なプレスファーネスを1台備えています。

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ポーセレンの築盛技術を標準化するために、透水性の陶材用パレットを使用し、そのカバー表面には使用する陶材の種類とパレット上の配置を示す図を添付しています。

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陶材用パレットには使用する陶材がすでに配置され、パレットは共用としています。
例えば、基本色がA3であれば、A3用のパレットを保管用の棚から取り出して使用します。
ガラス練板を使用した場合は陶材の乾燥が早く、水を加えれば加えるほど脱色しますので、多色築盛法には適さず、また、残った陶材は捨てざるを得なくなり不経済になります。
そのため、ガラス練板は全く使っていません。

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ちなみに、メタルボンドの症例にしてもオールセラミックの症例にしても、ひとつの基本色(例えばA3)のために、デンティン5色、透明4色、エナメル2色を用いた多色築盛法による築盛テクニックを教えています。
この築盛方法はすでに1990年初頭に考案し、専門誌上でも報告しています。
光が透過できないメタルやオペークの存在を感じさせずに天然歯に近い温かみのある色調を誰もが表現できるようにと考えついた方法です。
当時は、2色築盛法や3色築盛法にステインで着色する簡便な方法が主流でしたので、ひとつの歯に10色以上もの陶材を使用する私のシステム化した築盛方法については、当時の歯科技工士の方々からの理解が得られることはありませんでした。
中国の地で、やっと、役に立つときが来たようです。

川崎歯科技術研修センターで指導している実習生17名も1年間の実習期間を終え、7月にはそれぞれの学校を卒業します。
彼らは昨年の7月15日から私の指導を受けていますが、1年間の実習教育期間を含め5年間、弊社Lラボに継続勤務するという契約書にサインを行った実習生たちです。

中国のラボでは一般に分業制になっていますので、いったん勤務する部門が決められると何年もその部門で働き続けるということになります。
弊社Lラボでも十数年同じ部門で働いている人達が何人もいます。
作業模型を製作する部門に配属されたとすれば、何年勤務しても、作業模型の製作と咬合器装着の技術以外はできない歯科技工士となります。
あるいは、ポーセレン築盛部門に配属されれば、それ以外の関連した技術、たとえば、メタル・コーピングの製作法や歯冠の形態修正、あるいは、咬合を作る技術や知識なども全く持ち合わせていない歯科技工士となります。

中国のラボにおけるような分業制にすれば生産効率はあがりますが、各製作部門における品質管理と技術指導が徹底されない限り品質は劣化し、製作担当者の責任感も稀薄になります。
弊社Lラボにおいても言えることですが、中国ラボの問題点は、各製作部門における管理者の能力が一般的に不足し、歯科技工技術を幅広く熟知し、その技術を幅広く備えた人材が非常に少ないということです。

弊社Lラボの王社長も上記の問題点については痛感しているようです。
彼は40歳代の若くて先見の明に優れた社長です。
川崎歯科技術研修センターを設立することにより、歯科技工技術を幅広く熟知し、かつ、その技術を自ら備えた人材の育成を私に託したようです。

昨年の7月15日から現在までの主な実習内容は下記のとおりです。
1. 可撤式模型の製作と咬合器への装着
2. 調節性咬合器とフェースボーの操作
3. ドロップオン・テクニックによるワックスアップ技術(単冠から上下フルマウスまでのワックスアップを行い、咬合と審美を作るための訓練)
4. 真空埋没法、高周波鋳造法、電気溶接と赤外線溶接法
5. コバルト・クロム合金などノンプレシャス・メタルによるクラウンやブリッジのフレーム製作
6. e-maxプレステクニックによるインレーやオンレーとラミネートの製作
7. メタルボンドによるクラウン・ブリッジのためのポーセレン築盛(前、臼歯部とも)
8、臨床ケースを用いたメタルボンド・クラウンの製作(現在は臼歯部のみ)

私が知る限り、日本で多く用いられている硬質レジンで前装したクラウン・ブリッジの症例は中国ではほとんど無いようです。
これまで中国において4カ所のラボに勤務してきましたが、いずれのラボでも全く目にしたことが無いからです。
弊社Lラボでもクラウン・ブリッジの症例では、メタルボンドによるものかジルコニアやe-maxをベースにしたオールセラミックスによるものです。
時たま鋳造冠の症例があるにすぎません。
そのため、中国ではポーセレン技術を持った歯科技工士が高く評価され、必要とされています。

川崎歯科技術研修センターでは、実習生17名のための訓練を開始してすでに11ヶ月が過ぎました。
その間、約7ヶ月は研修用模型を使用した基礎実習にあてました。
その後、4ヶ月前よりメタルボンドによるクラウン・ブリッジに関する臨床ケースを用いた指導を行っています。
まずは、メタル・コーピングやブリッジのフレーム製作だけをさせて、その後、1ヶ月前から築盛、完成までを任せています。
ただし、現在は臼歯部のクラウン・ブリッジに限って行っています。

日本では、国家資格を持たない学生は臨床ケースの製作に携わることは禁止されていますが、中国ではそのような規制はありません。
学生であっても臨床ケースを製作することができます。

下記の写真は川崎歯科技術研修センターで学んでいる17名の実習生が製作したメタルボンド・クラウンの臨床ケースです。
作業模型は模型製作部で製作されていますが、その後のステップである平均値咬合器(Girrbach Artex BN)への装着、ワックスアップ、埋没、鋳造、メタルの調整、ポーセレンの築盛と焼成、形態修正、ステインによる着色、完成など全てのステップを誰の手も借りずに研修生各自が製作した臨床ケースです。

名前のあとに“中専学生”とあるのは、中学あるいは高校卒業後に職業訓練学校で学んだ学生です。
“大専学生”とあるのは、高校卒業後に大学専科で学んだ学生です。

王洋洋 18歳♀ 中専学生

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孙嘉ト 18歳♀ 中専学生

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刘璇 18歳♀ 中専学生

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吴熈章 18歳♂ 中専学生

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张一帆 20歳♂ 中専学生

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王倩 20歳♀ 大専学生

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张莲莲 21歳♀ 大専学生

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王书璇 21歳♀ 大専学生

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王鑫丽 21歳♀ 大専学生

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张欢 21歳♀ 大専学生

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刘瑞华 22歳♀ 大専学生

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李东悦 22歳♂ 大専学生

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张亚 22歳♀ 大専学生

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李靖蓉亚 23歳♀ 大専学生

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康安 23歳♀ 大専学生

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李学静 23歳♀ 中専学生

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王婷 24歳♀ 大専学生
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学校では歯形彫刻もワックスアップもしたことがほとんどない学生たちでしたが、それぞれに真面目に努力し、一年足らずで上記写真の技術レベルになってくれました。
彼らは今年の7月15日には実習期間を終え、正式に弊社Lラボの社員となり、川崎歯科技術研修センターに併設される川崎工作室の部門で引き続き私の指導を受けながら働くことになります。
将来、彼らが中国のみならず、他国の地でも歯科技工士として大きく羽ばたいてくれることを願いながら日々指導を行っているところです。



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