流浪の歯科技工士・王譯平・・・老馬之智

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zoom RSS 東京医科歯科大学口腔保健工学専攻の学生S.A.君への返信メール・第2信

<<   作成日時 : 2018/05/01 22:58   >>

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あなたからの返信メールに「私の叔父は米国シアトルで開業し、永住権を得ております」とあります。
日本から海外へ出られた歯科技工士の方々は、日本における歯科技工界の悪い状況から抜け出し、海外で技術を学ぶと共に、自分の将来の可能性を探したいと思って行動された方が多いのではないかと思います。
あなたの叔父さんもそうだったに違いありません。

歯科技工学校によって程度の差があるとは思いますが、授業ではポーセレンやキャスト・パーシャルあるいはアタッチメントやインプラントなど、自費の症例で使用される高度な技術を実習したり、それらの理論を学んだりされていると思います。
しかし、歯科技工学校を卒業して、すぐに役立つわけではありません。
日本ではただでさえ自費の症例は少なく、自費は総技工物の10%程度といわれます。
そのような貴重な症例を卒業したての人や臨床経験が浅い人にラボの経営者がまかせるはずがありません。

結局、若い人たちは、保険技工で単純な誰でも出来るような仕事をさせられることになります。
但し、保険の技工料は安く、その上、価格競争までも強いられていますので、若い人に対しては、支払う給料に見合う、できるだけ数多くの仕事量が与えられることになります。
一般に、卒業したての若い人は仕事のスピードも遅く、そのため、夜遅くまでの残業を強いられることになります。
その結果、若い人は歯科技工に興味と希望をなくし、数か月もたたないうちに見切りをつけ、他業種へ転職する人が多いといわれます。

このようなことが生じる根本的な問題のひとつは、日本の歯科医療の保険制度にあると思います。
保険に収載されている修復物は中国でも製作することがほとんどない時代遅れのものが少なからず見受けられます。
このようなレベルの歯科技工物の製作を若い人たちに強いる現状を変えない限り、若い人の歯科技工離れはなくならないでしょう。

歯科技工に興味を持ち、自分の歯科技工士としての将来に希望を失っていない若い一部の人たちは、海外へ可能性を求め、これまでも多くの若い人たちが日本から脱出されたのだろうと思います。
そのなかでも、実力が備わり、運にめぐまれた場合にのみ、あなたの叔父さんのように成功されたと言われる人になるのだと私は思います。

また、私の記憶に間違いが無ければ、ドイツ・マイスターの称号を取得するためにはドイツの同じ1ヵ所のラボに7年以上勤務する必要があります。
その努力と忍耐によって受験資格を得られ、あなたのメールにもありました大畠一成さんや大川友成さんのように、日本人でありながらドイツ・マイスターの称号を取得され、国際的にも有名になられ、活躍されているのだと思います。

私の場合も、41歳のときにスイスのベルン大学医学部、歯科補綴学科へ留学生として2年間在籍させてもらい、その後、ドイツのラボ2カ所に合計約4年間セラミストとして勤務した経験があります。
留学前、わたしは福岡で自分の小さなラボを持っていましたが、その時代、もっとも歯科技工技術のレベルが高いスイスとドイツで自分の技術を磨き、経験を積みたいという思いから、ラボを閉鎖し、日本を脱出しました。
私もそうでしたが、海外へ出る人たちにはそれぞれに理由や切掛けとなる事があります。
しかし、基本的には自分のためであり、海外から日本の歯科技工のために役立ちたいとか、日本の歯科技工界を改革したいなどと真剣に考えている人はいないだろうと思います。
海外では、歯科技工士として生き残る戦いをしながら、かつ、自分や家族が食べていく糧を得るのが精一杯で、とてもそのような余裕はないのです。

あなたの学校の先輩でもある伊集院正俊先生と彼の親友で和田精密歯研(株)の顧問をされている三好博文先生は、昔から日本の歯科技工界の改革に真剣に取り組まれてきた方々です。
ぜひ、酒を酌み交わしながらでも、メールに書かれている歯科技工界の改革に対するあなたの考えを彼らと討論されるとよいでしょう。
彼らの豊富な経験と考えはきっとあなたの役に立つことと思います。


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ご無沙汰しております。
過日突然埼玉のM氏から電話を頂きましたが、今更ながら「技工界はどうしたら変わると思う?」と聞かれ、私は「技工界を変えたいのなら政治で変えるしかないですね」と昔と変わらないことを言って切りました。しかしながら市場経済原理において今の技工界は変わりつつあります。ここまで来たのなら放置して需要と供給が調整されるのを待つことが得策かもしれません。
としじい
2018/05/02 18:01

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