流浪の歯科技工士・王譯平・・・老馬之智

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zoom RSS アナログ技工とCAD/CAMのコラボレーション/インプラント技工の症例において

<<   作成日時 : 2018/11/11 12:47  

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弊社Lラボの川崎工作室では、医療専門大学の実習生4名を含めて総勢25名の牙科技師(日本で言う歯科技工士)が働いています。
彼らは20歳から24歳の若い子達です。
医療専門大学の口腔修復工芸科(日本で言う歯科技工士科)を卒業して半年から1年半ほどの臨床経験しかない若い子達です。
そのため彼ら一人ひとりが、技術管理を任されている私に、製作ステップのポイント、ポイントでチェックを受けに来ます。
その度に、問題個所の修正や指示、あるいは、製作方法を指導することになります。
その他、写真による症例の記録や弊社王社長に提出する報告書の作成などもありますので、私自身が歯科技工物の製作に携わる時間は全くありません。

最近は、川崎工作室で製作する技工物も徐々に増加の道を辿っています。
ジルコニアをベースにしたオールセラミックスの症例が主ですが、その製作数は月間700〜800歯となっています。

一般に、CAD/CAMによってクラウン・ブリッジを製作する場合には、パソコン画面のバーチャル立体画像を操作しながらデジタルによる設計が行われます。

私個人としては、その方法の能力に対する限界を少なからず感じています。
それは、機能的な咬合をつくる上での問題をはじめ、審美的な形態や排列などの点においてです。

特に、咬合に関しては、中心咬合位における咬合接触点の回復はある程度できますが、前方や左右側方運動並びに後方移動の際のチェックが十分にできません。
そのため、シンタリングを終えたフルジルコニアクラウンやブリッジに対して、咬合調整や歯冠形態の修正を余儀なくされる場合が多くなります。

川崎工作室では、そのような問題を極力少なくするために、全ての症例に対し、アナログ技工によるワックスアップを併用するダブルスキャン方式でジルコニアをベースとしたクラウン・ブリッジの製作を行っています。
下記URLの本ブログ記事をご参照ください。
https://xiaolong1017.at.webry.info/201806/article_1.html

川崎工作室では、数は多くありませんがe.maxプレスによるラミネートやオンレー、およびインプラント上部構造の製作も行っています。
そのインプラントの症例のひとつを、アナログ技工を専門にしている立場から、CAD/CAMとどのようにコラボレーション(共同作業)しているか、ご参考までに報告さていただきます。

図1
北京市の著名な歯科医院から上部構造の製作とそれに伴う咬合再構成の依頼を受けた症例です
作業模型は歯科医院の技工室で製作されたものです。
上顎のPMMA樹脂によるテンポラリー・ブリッジと仮排列された下顎のネジ固定式義歯によって中心咬合位における咬合採得が行われていました。
これらは、弊社Lラボ本社のCAD/CAM部と義歯部およびインプラント部による分業で製作されたものです。

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図2
上顎模型には、CAD/CAM部とインプラント部で製作されたチタン合金によるカスタム・アバットメントがネジ固定され、下顎模型にはITIのスクリュー固定アバットメント・レプリカが定位置に埋め込まれていました。
上下顎のブリッジ・フレームはチタン合金で製作し、コンポジット・レジン前装によって審美と咬合を回復して欲しいとの依頼でした。

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図3
作業模型と一緒に、上顎のPMMA樹脂によるテンポラリー・ブリッジ試適時の写真(スマホによる?)が数枚添付されてきました。
このテンポラリー・ブリッジの設計はCAD/CAM部において行われたものです。
パソコン画面のバーチャル立体画像を操作しながらデジタル設計され、CAM(研削加工機)によって製作されています。
試適時には、歯科医師から幾つかの審美的な問題点が指摘されています。
左側の豊隆が大きく排列も悪いこと、反して、右側の豊隆が足りないこと、上顎左側切歯の形態が悪いこと、臼歯部の歯冠が長く見えることなどです。
上部構造製作の際には、これらの点を修正して製作して欲しいとのことでした。

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図4、図5、図6
川崎工作室では、歯科医師の指示と試適後のテンポラリーや仮義歯を参考にしながら、上顎のワックスアップ及び下顎の排列と咬合面の修正を行いました。

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中国のラボの多くは分業によって歯科技工物が製作されています。
例えば、メタルボンド・クラウンを1個製作するために、作業模型製作から完成まで10人前後が係る場合もあります。
川崎工作室では分業は一切行いません。
作業模型製作とCAD/CAM関係の作業は本社ラボで行いますが、それ以外のアナログ技工に関しては、咬合器装着から完成まで、1症例を一人で担当させることにしています。

中国ラボの場合、分業でルーティーン化された作業現場で働いている歯科技工士は、往々にして、前後の作業技術の理解が不足し、特に、技術管理部門で指導する立場になった時、その能力に欠ける場合が多いように思われるからです。

本症例では、咬合器装着から完成まで、本ブログの下記URLでもご紹介しました郭暁琴(グオ・シアオチン)が一人で作業を行い、完成させたものです。
https://xiaolong1017.at.webry.info/201808/article_2.html

図7、図8
最終形態のワックスアップからコンポジット・レジンの前装スペースをカット・バックし、ブリッジのフレーム原型を即時重合レジンで製作します。
咬合高径を維持するために、最後臼歯部に上下顎の歯が金属で接触する咬合点を設計しています(白矢印部をご参照ください)。

バーチャル画面での設計では、前装スペースや排列状態、並びに、上下顎の咬合関係などを全て考慮した複雑な設計は困難ですので、やはり、アナログ技工は必須となります。
これらの原型を弊社LラボのCAD/CAM部へ送りますと、ダブルスキャン方式によって簡単にデジタル加工され、CAM(切削加工機)で加工されたチタン合金によるブリッジ・フレームが完成します。

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図9
CAM(切削加工機)によって製作されチタン合金によるブリッジ・フレームです。

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図10
コンポジット・レジンの強固な結合を得るための機械的な維持や、粘膜との接触面積の決定など、やはり、アナログ技工による修正は必須となります。

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図11、図12、図13
下顎のネジ固定式ブリッジのフレームが完成し、インプラント・レプリカにネジ固定された状態です。
白矢印部分で精密な適合状態が確認できます。
アナログ技工では、このような精密度を得ることは不可能です。
このような精密技工に関しては、CAD/CAM技術は必須で、また、容易にその技術を応用できる時代になっています。

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図14
弊社Lラボ本社のCAD/CAM部で製作されたチタン合金によるカスタム・アバットメントです。
チタン合金によるカスタム・アバットメントがCADで切削加工されるためには、アバットメントの頬側面と舌側面(あるいは近心面と遠心面)にサポート部を設計する必要があります。
CADによる切削加工後、そのサポート部は切断、除去され、その後、従来のミリング・マシーンを用いたり、技工用エンジンを用いたりしながら加工修正し、研磨して仕上げます。

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図15
その際に手作業で行われますので、どうしても微小なアンダー・カットが加工修正した表面に生じます。
そうしますと、CAD/CAMによる外冠フレームは50〜70μの最小のセメント・スペースで製作されますので、白矢印部にみられるように、外冠フレームにおける不適合状態が生じます。
そのため、この作業でも手作業のアナログ技工による調整は必須となります

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図16
手作業のアナログ技工によって調整され、修正された外冠フレームです。
カスタム・アバットメントと外観フレームの適合状態が改善されています(白矢印部を参照ください)。

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図17
チタン合金によって製作され、コンポジット・レジンを前装する準備ができた上下顎のブリッジ・フレームです。
咬合高径を維持するために、最後臼歯部に上下顎の歯が金属で接触する咬合点を設計しています(白矢印部を参照ください)。

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図18
コンポジット・レジンによって前装された下顎のネジ固定式上部構造です。

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図19
歯科医師の指示に基づき、インプラント部は歯間ブラシの00番が使用できる程度の空隙に調整しました。

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図20、図21
上下顎の咬合面観です。
上顎はセメント固定、下顎はネジ固定による上部構造ですので、咬合再構成は固定性のクラウン・ブリッジに準じて行いました。

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図22
中心咬合位における唇側面観です。

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図23
前方位における前歯接触状態です。

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図24
右側方位における前歯接触状態です。

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図25
左側方位における前歯接触状態です。

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図26
先月の77歳になった私の誕生日に、川崎工作室の教え子達がお金を出し合って、大きなバースデー・ケーキを買って祝ってくれました。
右側のマスクをした女性が、本症例の上部構造を製作した郭暁琴(グオ・シアオチン)です。

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川崎工作室の教え子達の中には北京市出身の者はひとりもいません。
帰郷するにしても、バスや鉄道で5時間以上かかるという地方の農村部出身者がほとんどです。
中国では結婚後の共働きは当たり前になっていて、このスタッフのなかには、結婚している女性が二人います。
また、そのひとりは妊娠6カ月の身重ですが働いています。
二人とも夫は故郷や北京外の都市で働いていますので、会いに帰るのは土日や祝日を利用して2週間に一度程度と言います。

川崎工作室で働いている中国の女性達はとても勤勉で、また、芯の強さを感じます。
故郷に恋人がいるという女性も何人かいますので、いずれ、川崎工作室から巣立って故郷にあるラボで勤務することになるのかもしれません。
それまでに、少しでも高いレベルの技術を習得させ、他のラボにおける技術の管理業務ができるようにしてあげたいと思っているところです。




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