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zoom RSS 川崎歯科技術研修センターの現状と移転の可能性

<<   作成日時 : 2019/01/06 12:15  

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遅ればせながら、新年のお慶びを申し上げます。
弊社Lラボでは、大晦日と元旦だけは休日となりましたが、2日からは平常通りの業務を行っています。
中国ラボでは、日本の正月にあたる春節(今年は2月5日)までは非常に忙しい時期になりますので、弊社Lラボでもその間は土日の休みもなく業務を行うことになっています。
そして、それが過ぎると、待ちに待った10日間の春節休暇に入ります。
川崎歯科技術研修センター兼川崎工作室(以下、川崎研修センター)の若い教え子たちも、故郷の両親のもとに帰る日を、首を長くして待っているようです。

昨年は弊社Lラボにとって、予期しない多くの出費を強いられた年でもあったようです。

北京市では昨年、社員寮のボンベが爆発したことによって19名の若い命が絶たれ、多くの被害者を出した火災事故が発生しました。
それを機に、それぞれの区役所による社員寮の構造や設備の見直しが行われ、検査に合格しない社員寮や不法な建造物はことごとく閉鎖され、その後、取り壊しが行われました。

中国共産党の機関紙「人民日報」によりますと、北京市は不法建造物の延べ4000万平方メートルを壊す計画があるとのことです。
日本とは違って、一党独裁による政府の方針によって強権的に行われている行政ですので、一般市民がその施策に対して異議を申し立てることなどできません。

実は、弊社Lラボが二百数十名の従業員や研修生たちのために賃貸契約し、何年ものあいだ利用していた寮も突然立ち退きを強いられ、その数週間後には跡形もなく取り壊されてしまいました。

図1
弊社Lラボが賃貸契約していた社員寮の全景です。
弊社Lラボだけでなくこの地域にある何社かの従業員もこの寮で生活していました。

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図2
すでに取り壊された現在の状態です。
Lラボの従業員や研修生たちは、現在、数カ所に分散されて、快適とは言えない寮生活を強いられているようです。

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弊社Lラボがある地区は将来、北京市の副都市になるという計画が進んでいて、工場は北京市郊外の他の地区や北京市近辺の省に移転を強いられているようです。
弊社Lラボのような歯科技工所に対しても工場という位置づけがされていますので、構造や設備に対する北京市の検査は年々厳しくなってきています。
昨年の5月に内装を終えて移転したばかりの川崎研修センターですが、夏を迎える頃には、弊社Lラボ本社と共に、再び他の地区への移転を余儀なくされるかもしれません。

そのような可能性も考えられますので、将来、思い出すための一助となるよう、川崎研修センターにおける現在の状況を書き留めておくことにしました。

図3
パソコンを用いて描いた私の素人設計によるものですが、現在の川崎研修センター平面設計図です(画像をクリックすると拡大できます)。
以下に、それぞれの作業室における現在の様子を述べさせていただきます。

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図4
私専用の「川崎office」です。
全ての臨床ケースはまずここへ持ち込まれ、指示書と上下顎の石膏模型が撮影、記録されます。
その後、各製作担当者のもとに配られます。
また、製作完成した全ての技工物もここへ持ち込まれ、品質検査の後に撮影、記録されます。
その後、本社ラボの出荷部門に送り届けられます。
本社ラボは歩いて10分程の距離にあります。

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図5
「模型製作室」の作業状況です。
一般的な症例の作業模型は本社ラボで製作されますが、咬合再構成やインプラントの症例など要求度が高い症例の作業模型は川崎研修センターで製作します。
本社ラボでは完全な分業制をとっていますが、川崎研修センターでは分業による製作は行っていません。
作業模型の咬合器装着から始めて、技工物完成に至るまで一人で担当、製作しています。
咬合器については、全員がドイツAMANN Girrbach製の平均値咬合器あるいは半調節性咬合器を使用しています。
もちろん、単冠のケースであっても、咬合器への装着は行います。

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図6
「Wax-up室」の作業状況です。
川崎研修センターでは、オールセラミックス・クラウンの症例をメインとして製作しています。
CAD/CAMによるジルコニア・クラウンについては、ワックス・アップしたものをダブルスキャンする方法で製作しています。
そのため、実習生の基礎訓練の際には、約半年間、ワックス・アップの練習を通して咬合をいかに作るかの訓練を徹底的に行います。
現在では、川崎研修センターだけで月産750個〜800個のジルコニア・クラウンを製作できるレベルに達しています。

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図7
「CAD/CAM設計室」です。
スキャナーでスキャンし、デザインソフトで設計した後、そのデータ資料をメールで本社ラボのCAD/CAM部へ送ります。
ジルコニアの切削加工は本社ラボの大型切削加工機で行われます。
但し、ガラスセラミックによるインレーやオンレーなどは、ここに設置されている小型切削加工機を用いて製作しています。

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図8
最近導入され、テスト中のスキャナーは中国製で、従来型のようなボックス・タイプではありません。
そのため、咬合器に装着した状態でスキャンできます。
また、作業模型の厚さにも影響されないため、咬合器のマウンティング・プレートに模型を装着した状態でもスキャンができます。
インプラントのケースはもちろんのこと、ダブルスキャン技術も問題ありません。

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聞くところによりますと、Kavo社と3Shape社の元技術者3名が中国の会社と組んで開発されたスキャナーとのことです。
主に欧米に輸出されているそうです。
私どもでテストした結果、スキャン画像も鮮明で性能的に問題は感じられませんでした。
価格も4万5千元(約71万円)だということで、求めやすい価格となっています。
更にテストを続けて多くの症例に対して問題がなければ、台数を増やす予定となっています。

図9
「形態修正・内冠研磨室」です。
2人用の技工机に1台の割で20倍のマイクロスコープが設置されています。
ここでの作業にはマイクロスコープは必需品となっています。
マイクロスコープは中国製ですが、レンズ部分については日本製が使われているとのことです。
この作業室は使用頻度が高いため、18人が同時に作業できる技工机の配置となっています。

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図10
「ポーセレン築盛・焼成室」です。

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川崎研修センターには、現在20名が所属しています。
20歳から24歳の若い子たちで、そのうちの18名は女性です。
医療専門大学を卒業して3級(高級)の牙科技師免許取得者(日本でいう歯科技工士)が16名、医療専門大学3年生で実習生身分の4名からなっています。

医療専門大学では一般に技工実習は行われておらず、2年間、教科書による理論の勉強だけが行われています。
そのため、技工技術に関しては全く経験がなく、実習生として川崎研修センターに所属後、ここで技工技術の訓練を受けて学んだ者たちばかりです。

医療専門大学を卒業している16名については、全員がすでにポーセレン築盛の訓練を終えて、すでに要求度が高い臨床ケースの製作にも携わっています。
実習生4名はフルジルコニア・クラウンのための訓練を修了して、すでに臨床ケースの製作に携わっていますが、まだ、ポーセレン築盛技術は教えていません。

図11
「研修室」におけるポーセレン築盛技術の研修状況です。

まず、ガラス練板を使用することによる問題点と透水性パレットの必要性の説明から入ります。

オールセラミックスの基本築盛実習では、デンティン4色、透明4色、エナメル2色を用いた多色積層法と数回の焼成を併用した技術を教えています。

また高度な技術レベルの実習では、デンティン色と透明色を築盛、焼成後にその表面に着色,焼成し、更に、その表面にエナメル色を築盛、焼成する方法も指導しています。

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前歯の唇側表面にはステインでの着色は行わずに、内部から明るい色調を表現しなければならないことを強調し、指導しています。
ちなみに、ポーセレンはイボクラー社のオールセラミックス用e.max陶材を用いています。

一般に、中国の医療専門大学では技工実習が行われていませんので、学生たちはポーセレン技術についての知識もまったくなく、ポーセレンの粉末さえ見たことがないようです。
そのような学生たちに、本人の勘に頼ったような築盛方法では上達が望めません。

ちなみに、上記の方法は、すでに1990年代初め頃にQDTなどの技工雑誌の誌上で提案したシステム化した築盛方法ですが、約28年を経てやっと中国で役立ったように感じています。

図12
最近製作されたジルコニアをベースにしたオールセラミックス・クラウンの症例をご紹介いたします。
CAD/CAM操作は本社のCAD/CAM部で行われましたが、ガム付き作業模型の製作からフェースボーを用いた半調節性咬合器への装着、更にポーセレン築盛から完成に至るまで、医療専門大学を卒業後,臨床経験約2年半の教え子が一人で担当しました。

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図13
まず、スキャン専用ワックスを用いて歯列の最終形態をワックス・アップした後、パテ状シリコーンを用いて唇側と舌側のコアおよび切端の位置確認のためのコアなど3種類のシリコーン・コアを作成します
その後、唇側コアを参考にしながら、唇側面をカット・バックし、ポーセレンの築盛スペースを確保します。
前歯舌側面や臼歯咬合面は、前歯誘導路の作成や咬合接触点の位置などの機能面を重視する必要があります。
そのため、ワックス・アップした形態をフルジルコニアによって復元する、いわゆるCAD/CAMのダブルスキャン・テクニックによる製作法を行っています。

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図14
舌側面や咬合面がフルジルコニアの場合、透明感が不足した不自然な色調となりますので、ステインを用いた着色によって改善しています。

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図15
ポーセレン築盛時には勘を頼りに行うのではなく、舌側コアや切端位置確認のためのコアを参考にしながら築盛するように指導しています。
また形態修正時にも、シリコーン・コアをガイドとして行うように指導しています。
唇側表面にはステインによる着色は行っていません。
システム化した多色築盛法によって製作した、臨床経験2年半の教え子によるひとつの臨床例です。

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ジルコニアやガラスセラミックのブロックがさらに進化して、色調が大幅に改良されれば、ワックス・アップをダブルスキャンして製作するCAD/CAM技術がますます普及し、熟練を要する上記のような多色築盛技術は不要とされる時代が来ることでしょう。

図16
川崎研修センターの入口の壁に取り付けられた看板です。
取り外し可能としていますので、たとえ現在の川崎研修センターが取り壊されてなくなったとしても、移転先の新たな場所で、私の教え子たちと共に再び力強く甦ることと思います。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
新年、明けましておめでとうございます。
ご隠居におかれましては輝かしい新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。
ご健康とご多幸をお祈りし、新年のご挨拶とさせていただきます。
としじい
2019/01/07 09:54
としじいさんへ
新年のご挨拶をいただきありがとうございました。
今週にも弊社王社長と移転先の状況を見に行き、ラボ設計のための段取りを行うことになっています。
まだ当分、ご隠居生活はできそうにありません。
今年もよろしくお願いします。
王譯平
2019/01/07 10:08

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