三好博文先生への返信/45年前の第一回国際歯科技工学術大会におけるテクニカルコンテスト作品について


私が製作したコンテスト作品は、スイスのベルン大学で開発されたIRV(歯冠空隙閉塞装置)というミリングテクニックをベースに設計いたしました。

製作時のことについては、当時から、不思議な思いを持っています。
私一人の力だけでなく、何か目に見えない大きな力の助けを得て完成に漕ぎつけたような気がしてなりません。

ミリングテクニックによる作品ですので、ミリング作業の途中でミリングバーやクラウン表面から鋳造巣が一つでも生じれば、欠陥品となり再製しなければなりません。
また、鋳造やろう着操作後に、少しでも誤差が生じ、マトリックス(内冠)とパトリックス(外冠)の適合状態が悪くなれば、再製を余儀なくされます。

過去にIRVの臨床ケースを製作した際には、どのケースにおいても度々ミスが生じて修正を繰り返すことが多かったのですが、このコンテスト作品製作時には、何一つとして問題が起こらずに完成することができたのです。
その当時の私にとっては、奇跡とも言えることでした。

また、製作過程で問題が生じれば、提出期限に間に合わなくなるかもしれないぎりぎりの日程で製作していましたので、日々緊張の連続でしたが、無事予定通りに完成することができました。

当時は今のような宅配便はなく、日数がかかるJRの小荷物便で送りましたが、提出最終期限日の前日に届き、期限ぎりぎりに間に合ったことを日本歯科技工士会の担当役員の方からお聞きしました。

私のコンテスト作品は、福岡の片田舎で営んでいたひとりラボにおける粗末な設備とその当時の材料を用いて、精一杯の力で製作したものです。

IRVの技術を習得するには、多くの時間と臨床における試行錯誤を要しましたが、インプラントが普及した今となっては、このような複雑なミリングテクニックは必要とされません。

私自身、スイスのベルン大学に留学したことによって、IRVミリングテクニックがすでに過去のものであることを知り、留学をした1983年を機に、IRVを用いたケースはただの1ケースも製作していません。

長い間こだわっていたIRVの技術に対する思いに見切りをつけ、新たな歯科技工の道を探すため、一から出直すことにしたのです。

私が製作したコンテスト作品は、今ではガラパゴス諸島の生き物のような存在になってしまいましたが、本ブログにその実態を残すことにしました。
皆様方にとって、何らかのご参考になれば幸いです。

図1
45年前の1976年、京都の国際会議場で開催され、32ヵ国からの参加者があったという第一回国際歯科技工学術大会。
その学術大会において行われたテクニカルコンテストで最優秀賞を受賞した私の作品です。

指定された症例は、5432|346 の歯牙が残存している症例部位を補綴し、上顎全体を審美的、機能的に回復するにはどうしたらよいか?なお、残存歯が有髄、無髄歯の想定は自由とし、対合歯の問題は省略するというものでした。

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図2
全ての残存歯をマトリックス(内冠)によって連結。 43| と |34 にはkey&keyweyを製作して連結。 2| とミリングバーはネジ式アタッチメントで連結。クラウンの唇側面は硬質レジンで前装しています。

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図3 
|34の key&keyweyの部分で |4-6 のマトリックス(内冠)を取り外したところです。

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図4
|34 のkey&keyweyを篏合させて |4-6 のマトリックス(内冠)を連結したところです。

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図5
|6 におけるマトリックス(内冠)とパトリックス(外冠)の適合状態。パトリックス(外冠)の遠心部には歯冠外アタッチメントを用いています。

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図6
パトリックス(外冠)は歯冠外アタッチメントによって分離できる構造にしました。

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図7
パトリックス(外冠)を口蓋側(裏面)から見た状態です。マトリックス(内冠)のクラウンに接触する内面部分には、フリクショナルピンをろう着してパトリックス(外冠)の維持強度の調節ができるようにしています。

contest07.jpg

図8
テクニカルコンテストにおける審査員(前列)と受賞者(後列)の写真です。
前列の最右端はスイスのチューリッヒ大学の教授で、ゲルバー咬合論で著名なゲルバー教授です。
後列の矢印が私です。
当時、34歳、歯科技工学校を卒業6年後の時でした。

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この記事へのコメント

通りすがりDT
2021年10月22日 09:20
こんにちは
先生のこの作品を拝見させていただいたのは、エムリヴェールで開催された
カボの研修会だったと思います。確か、エントリー番号は1117だったでしょうか?食事会の時にその話を伺ったような(間違ってたらすいません)
もう20年以上もたっていますが、いい思い出です。
また見れてよかったです。ありがとうございました。

寒くなってきたので、お体ご自愛下さい