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zoom RSS CAD/CAMを用いたクラウン・ブリッジ製作システムCeramill Sintronの適合精度テスト

<<   作成日時 : 2016/11/12 19:38   >>

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CAD/CAMを用いたクラウン・ブリッジの製作法にAMANN Girrbach社のCeramill Sintronというシステムがあります。
切削と焼結を組みあわせた方法によって、コバルトクロム合金によるクラウン・ブリッジのメタル・コーピングやフレームを製作するシステムです。
私個人的に、非常に興味を持っているシステムです。

コバルトクロム合金によるメタル・コーピングやフレームをCAD/CAMを用いて製作する方法には、主に3種類の方法があります。
1.切削と焼結を組み合わせたAMANN Girrbach社のCeramill Sintronなどの方法
2.EOS社などの3Dプリンターによる金属粉末積層法(いわゆるレーザーシンタリング法)
3.切削機を用いてメタルディスクから削り出す方法
などがありますが、それぞれに長所と短所を備えています。

例えば、メタルディスクから削り出す方法は、メタルディスクの硬度がいくらか軟らかく調整されているそうですが、硬度280VHN以上あるメタルディスクであるとのことですので、大型の切削機が必要であることや切削用のバーの消耗などを考えますと高コストになり、一般に普及されることは難しいように思われます。

その点、Ceramill Sintronの方法であれば、切削時はワックスや樹脂を削るように柔らかいため小型の切削機で対応できます。
また、焼結後の硬度は270VHNだとのことですので、従来からある鋳造用のコバルトクロム合金の硬度約360VHNよりも軟らかいため研磨や調整などの操作も容易になります。
また、EOS社のレーザーシンタリング法のように咬合面に数多くのサポート・ピンを必要としないため、咬合面形態が正確に回復されるという長所もあります。
そのため、金属で咬合を再構築する必要がある症例には非常に適した方法だといえます。

私が現在勤務しています北京のLラボには、まだCeramill Sintronのシステムは導入されていません。
弊社Lラボでは、クラウン・ブリッジによる症例の約90%以上がオールセラミックスあるいは金属焼付ポーセレンのフルベイクによる修復物です。
硬質レジンはインプラントを含む咬合再構築の症例など、一部の症例には使用されていますが、一般のクラウン・ブリッジにはほとんど使われていません。
そのため、一般的に、中国のラボでは咬合面や前歯の舌側面を金属で回復することは少なく、咬合関係を金属で正確に復元できる長所を持つCeramill Sintronのシステムはあまりその価値を認められていないようです。

そこで今回、北京にあるAMANN Girrbach China社において研修センターの責任者であり、また、インストラクターでもある陈c州(チェン・ユウジョウ)さんにお願いしてCeramill Sintronによる適合の精度がどのようなものかをテストさせていただくことにしました。

ブリッジの場合は、4歯以内の連結でしかも長さは50mm以内であれば精度の保証ができるとの条件が付きましたが、無理をお願いして、6歯連結のブリッジのケースでテストしていただきました。

図1 Ceramill Sintronのシステムで研削および焼結された6歯連結のブリッジです。

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図2 このようなロングスパン・ブリッジの場合は、専用のソフトによって、焼結時の変形を防ぐためのサボート・ピンやバーを設計できるようになっています。

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図3 今回協力いただいたAMANN Girrbach China社の陈c州さんです。
約5年前、名古屋における愛知県歯科技工士会学術大会で講演された際の写真です。
彼女については、下記の記事でも紹介しています。
http://xiaolong1017.at.webry.info/201110/article_1.html
http://xiaolong1017.at.webry.info/201105/article_3.html

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図4 今回のテストについて打ち合わせを行った際の、彼女とのスナップ写真です。

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図5 Ceramill Sintronのディスクと切削後のブリッジやクラウンの例です。
4歯連結以内のブリッジやクラウンには焼結時のサポート・ピンやバーの設計は不要となっています(写真はAMANN Girrbach社広告より転用)。

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図6 アルゴンガスを用いた専用の焼結炉ArgothermUです(写真はAMANN Girrbach社広告より転用)。

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図7 弊社Lラボの研修生によるワックス・アップをダブルスキャン・テクニックによって製作したCeramill Sintronによるブリッジや連結冠です。
サポート・ピンを必要としないため、咬合面の形態がほぼ正確に再現されています。

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図8 焼結後のクラウン内面の状態です。
鋳造による場合よりもはるかに滑沢な面が得られます。

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図9 EOS社の3Dプリンター(EOSINT M270)による金属粉末積層法(いわゆるレーザーシンタリング法)で製作したブリッジ・フレームです。
咬合面はサポート・ピンで覆われますので、咬合面の形態を復元することができません。

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図10 また、内面には小突起(矢印参照)が生じたり,レーザー造形焼結時におけるらせん状の模様が入ったりしますので、インプラントやアタッチメントなどの精密技工には適していません。

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図11、12 陈c州さんにCeramill Sintronのテストを依頼する前に、弊社Lラボで6歯連結のジルコニア・ブリッジを製作してみました。
CADにおいては、ダブルスキャン・テクニックを用いて咬合面形態を設計しています。
模型上での適合精度に臨床上の問題はありませんでしたので(矢印参照)、その際に設計したstl.ファイルの資料をメールで送って製作を依頼しました。

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図13、14 メールで送ったstl.ファイル資料の一部です。
マージン部の設計や支台歯壁面のスペース量などを知ることができます(赤線枠内参照)。

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図15 焼結完成後に送られてきたブリッジです。
焼結時の変形を予防するためのサポート・ピンやバーは付けられたままの状態です。

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図16、17 ある程度予想はしていたのですが、焼結されたブリッジを作業模型に試適しましたところ、適合しませんでした(矢印参照)。
以下の図16から図28までのすべての試作品は、内面の調整など、全く手を加えていない状態のものです。
また、試適に使用した作業模型も、もちろん、図11,12と同じ模型です(模型下部の白い矢印部分で、同じ模型であることが確認できます)
ジルコニアディスクとCeramill Sintronディスクの収縮率は異なりますので、マージン部の設計や支台歯側壁のスペース量などの数値も、それぞれのディスクに適した数値に設定することは当然必要であると思われます。

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図18 使用されているCAD/CAM機のソフトによっても適合精度に違いが生じますので、そのことも考慮する必要があります。
Lラボの3ShapeCADソフトで設計したstl.ファイルの画像です。
マージン部やクラウン内面の画像に若干の荒れが見られます(矢印参照)。

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図19、20 そこで、作業模型を陈c州さんに送って、AMANNGirrbach社におけるCAD/CAM機で設計と製作をお願いすることにしました。
彼女から送られてきた設計図です。
マージン部の設計や支台歯側壁のスペース量などがLラボの設計図とは異なっています(赤線枠内を参照)。

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図21 陈c州さんから送られてきた設計後のstl.ファイルの画像です。
CADソフトはExocadをベースに、AMANNGirrbach社で独自に開発されたものだそうです。
図18と比較すると、非常に滑沢な面の画像となっています(矢印参照)。

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図22 陈c州さんによって設計、製作された6歯連結のブリッジです。

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図23 頬側観での適合についは、臨床で使用する上での問題は全く無いように見えました(矢印参照)。

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図24 但し、舌側観では臼歯部においてわずかながら不適合が見られました(矢印参照)。
やはり、ロングスパンのブリッジになると焼結時に歪が生じるようです。

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図25〜28
ところが、3歯連結のブリッジとして試適しましたところ、前歯部も臼歯部も適合精度に全く問題がないことがわかりました(矢印参照)。

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コバルトクロム合金によるクラウンやブリッジは、レーザー溶接によって連結することが可能です。
幾つかのブリッジを連結することによって、左右の第二大臼歯にまたがるクロスアーチ・スプリントの症例さえ製作することが可能となります。
したがって、3歯連結のブリッジにおいて適合精度が優れたものであれば、実用上、何ら問題はないと思われます。

図29 AMANN Girrbach社の広告に掲載されているロングスパン・ブリッジの焼結後の写真です(写真はAMANN Girrbach社広告より転用)。

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宣伝用のパンフレットに、上図のような難しいロングスパン・ブリッジの製作例が紹介されています。
もしかしたら、Ceramill Sintronに関するCAD/CAMソフトやそのシステムは、ドイツなどヨーロッパにおいて、すでに改良が進んでいるのかもしれません。
CAD/CAMを使用してロングスパン・ブリッジをワンピースで製作できれば、従来のレーザー溶接技術も不要になり、インプラントやミリング・アタッチメントなどを含んだ咬合再構築の症例など、複雑な症例も短期間で、しかも高い精度で簡単に、また安価に製作できるようになるでしょう。

日本では社会保険によるクラウン・ブリッジの症例をはじめ、多くの症例に硬質レジンが使用されていると思われます。
その場合、硬質レジンの摩耗を防ぐために咬合面や前歯の舌側面は金属で修復される必要があります。
現在は、コバルトクロム合金は社会保険に収載されてはいませんが、もし将来、社会保険に適用されることがあれば、日本では小型切削機を備えたCAD/CAMシステムがすでに普及しているようですので、Ceramill Sintronのシステムで、コバルトクロム合金によるクラウン・ブリッジを製作することは可能となるでしょう。

日本では非常に多く使用されているという社会保険適用の金銀パラジュウムウム合金は、1961年に収載されたと言われます。
そうであるなら、私が高校を卒業した翌年のことです。
金銀パラジュウム合金は社会保険における診療報酬を圧迫し、人体に対する問題もあるなどと言われながら、すでに約55年もの間、臨床で使用され続けてきたことになります。

CAD/CAM技術の発達にともなって、歯科技工の技術も変化しています。
昔はできなかったことが、今はできるようになっている技術もあります。
コバルトクロム合金を使用する技術もそのひとつです。
もしかしたら近い将来、金銀パラジュウム合金の代替え合金として、安価でしかも人体に対してより安全なコバルトクロム合金が、社会保険に収載される時代が来る可能性も否定できないのではないかと私は思っています。

もし将来、日本でそのような時代が来るとすれば、現在では高価といわれるCeramill Sintronのディスクも低価格となって普及可能となり、日本国民の歯科医療に貢献する機会もおとずれるのではないかと思っています。
拙い本記事の内容が、何らかのお役に立てるようでしたら幸いに存じます。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
いつも素晴らしい情報を頂、感謝申し上げておりますm(_ _)m。
としじい
2016/11/13 22:14
としじいさんへ
コメントありがとうございました。
その後、大変ご無沙汰いたしております。
こちらこそ、としじいさんのブログで日本の歯科界の情況を色々と教えていただき、大変助かっています。
一ヶ月ほど前に、Ceramill Sintronの焼結炉やディスクについて、日本で独占販売をされているという朝日レントゲン工業株式会社の事業戦略室の方へ メールで日本の状況を問い合わせたのですが、中国からの問い合わせだったためかスルーされたようで、いまだに返事をいただいていません。
日本のラボからの問い合わせであれば問題ないと思います。
どうか、お身体を大切に、今後とも、どうぞよろしくお願いします。

王譯平
2016/11/14 00:23
ご隠居様

私で良ければ、問い合わせ内容と相手先をお教えただ来ましたら、代わりに問い合わせさせて頂きます。
としじい
2016/11/14 10:09
としじいさんへ

ありがとうございます。
助かります。
としじいさんのメールアドレス宛に、朝日レントゲン工業株式会社の事業戦略室の方へお送りしたメールも一緒に添付していますので、どうかよろしくお願いします。
王譯平
2016/11/14 11:22

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