流浪の歯科技工士・王譯平・・・老馬之智

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zoom RSS 石膏棒を用いた歯型彫刻を一切行わない実習生のための基礎訓練/臼歯部の場合

<<   作成日時 : 2017/10/03 04:25   >>

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つい最近のことですが、北京で「歯科医師のための咬合再構築」というテーマで研修された日本の著名な歯科医師の先生とご一緒させていただき、食事をする機会がありました。
その際、「中国には歯科技工学校は無いのでしょう?」と聞かれましたので、「とんでもありません、約400カ所の学校で歯科技工士の教育が行われていると聞いています」と答えますと、「そうなんですか」と驚かれた表情をされていました。
日本ではまだまだ、中国における歯科技工教育や歯科技工技術レベルに関する情報が正しく伝わっていないのだろうなと痛感したものです。

中国では、3年制の職業訓練学校や医療専門大学または4年制の医科大学本科において口腔修復工芸科という学科が設けられており、そこで歯科技工士(中国では牙科技師と呼ばれます)のための教育が行われています。
ただし、学校においては2年間の理論を中心とした教育が行われ、その課程を終えた後、残りの1年間はラボで実習生として技術を学ぶことになります。

今年も弊社Lラボでは、学校における2年間の教育課程を終えた学生約100名を、実習生として受け入れることになりました。
そして、その中から社内試験で合格した20名の実習生を、弊社Lラボの研修センター「川崎歯科技術研修センター」で技術指導することになりました。

日本の歯科技工専門学校では、その教育期間中は常に実技が伴っていますが、中国の学校では実技が伴った教育はなされていません。
そのため、石膏棒を用いた歯型彫刻やワックス・アップの経験すらない学生がほとんどです。
当然、どのように歯を形成すればよいのかなど知る由もなく、素人同然の子たちです。

歯の形を覚えさせるために、日本の歯科技工専門学校やトレーニングセンターでは、石膏棒を用いた歯型彫刻の実習が行われています。
また、歯科技工士会主催で歯型彫刻コンテスト『ほるほる』なども行われて、歯科技工士にとって石膏棒を用いた歯型彫刻の技術は非常に重要視されているように見えます。

私が指導する基礎訓練では、石膏棒を用いた歯型彫刻は一切取り入れていません。
日本の多くの関係者の方々からの反論があることは十分承知の上ですが、彫刻刀を用いた歯型彫刻の技術を磨いても、咬合を作る作業やポーセレン築盛技術など、実際の臨床現場における作業ではほとんど役にたっていないように思うからです。
また、石膏棒を用いた歯型彫刻は、上達させるうえで時間がかかること、特に女性にとっては力を要するため負担が多く好まれないこと、上手く削ることができなかったり、削りすぎたりして失敗した場合には修正ができないため、自分は不器用だから上手にできないと決め込んでしまい、自信をなくさせることにつながりかねないなどの問題点もあります。

私が指導する基礎訓練では,ドロップオン・テクニックによるワックス・アップの方法を徹底して教えることにしていますが、まずは、ワックスに慣れさせることと天然歯の形態を観察できる能力と再現力を養うことを目的に訓練を行っています。
実習生のほとんどは、ワックス・アップの経験がありませんし、天然歯の形態についての知識も教科書で学んだ程度です。
そのため、指導にあたってはワックス・アップするうえでの明確な基準や数値を示しながら天然歯の特徴を理解させる必要があります。
それとともに、中心咬合位で咬合接触を行う箇所、および、その作成ステップや方法なども教えます。
訓練用模型としては、天然歯を石膏で復元した見本と、その見本を支台歯形成したワックス・アップ用模型を一組として実習生に渡し、使用させています。

下図はパワーポイントを用いて制作した実習生教育用のスライドと作品見本の一部です。
基礎訓練では、下記の4ステップを約2か月かけて、ステップ1からステップ4へとワンステップごとに進行します。

ステップ1 上顎第一大臼歯単冠
ステップ2 下顎第一大臼歯単冠
ステップ3 上顎小臼歯と大臼歯の3歯連結冠
ステップ4 下顎小臼歯と大臼歯の4歯連結冠

パワーポイントのスライドは各ステップとも30数コマにまとめ、それぞれのステップの講義や説明には約1時間半を費やしています。
実習生たちには、パネル・スクリーンに映し出された画像を各自のスマホで全て写し撮らせて、練習時の参考資料にさせています。
実習生20名の中の優秀な上位数名は、基礎訓練を始めて約2か月後には本スライドに使用しているワックス・アップの見本レベルに上達することができています。
これらの4ステップが全て終了した後、AMANN Girrbach社の平均値咬合器ArtexBNに可撤式作業模型を装着し、機能的ワックス・アップの訓練を行うことになります。

ステップ1の「上顎第一大臼歯単冠」のための実習生用教育スライドと作品の一部です。

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ステップ2の「下顎第一大臼歯単冠」のための実習生用教育スライドと作品の一部です。

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ステップ3の「上顎小臼歯と大臼歯の3歯連結冠」のための実習生用教育スライドと作品の一部です。

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ステップ4の「下顎小臼歯と大臼歯の4歯連結冠」のための実習生用教育スライドと作品の一部です。

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「CAD/CAMが発達してデジタル化が進むため、将来は、ソフトの中のライブラリーから必要な歯の形を選ぶだけで良く、そのため、ワックスによる歯型彫刻の技術など必要がなくなる」という人たちもいます。

しかし、CADのバーチャルによる設計方法は、インレーや単冠などの単純な症例に対しては有効な方法だとは思いますが、すべての症例に対して有効だと私は思いません。
例えば、多数歯にわたる症例や、特に、上下顎を咬合再構築するような複雑な症例では、やはり、調節性咬合器に装着した作業模型上でワックス・アップを行い、そのワックス・アップしたものをダブル・スキャンするCADテクニックの方がその後の修正も少なく、より早く、また正確に製作できます。
将来は、ジルコニアやガラスセラミックなどの材料がますます進化して、強度や色調も改善されることでしょう。
そうなれば、ワックス・アップ技術はますます重要になり、ダブル・スキャンを応用したCAD/CAMシステムによって複雑な症例も短期間で製作が可能になるだろうと私は思っています。



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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
王先生、毎度お世話になってます。
これはありありじゃないですか!
今度教える時に試してみます。
フィジカルワックスアップの技術はすべてのクラウンブリッジ製作過程において基礎になるので、この重要性をどうやって広めることができるかにあるとおもわれます。
デジタル化にしなければならない一つの理由として、人の意見を肯定的に捉えるもしくは論理的に議論できる人間をつくることにあります。なぜならこの新しい技術は今まで別個に確立されたものをコンバインして新しいものをつくることを可能にします。その味を知った人の考え方はより肯定的になり創造的(挑戦的笑)になります。ゆえにデジタル化を若い人に向けて発信するのは業界の未来をつくるということでもポジティブなことです。
王先生、新しいトレンド、議論的な事柄いっぱいあります
が建設的にどうトライするか、若い人たちがじっくりみてるからなかなか大変ですね!頑張ってください。
では失礼いたします。
Hiro Takada
2017/10/04 13:36
Hiro Takadaさんへ
コメントありがとうございました。
私たちの若い頃でもそうでしたが、中国の若い人たちも、目に見えて技術が上達していることが自覚できないと段々とやる気をなくしてしまいます。
また、経験や勘に頼るような方法で、各自の努力に期待しても何一つ良い結果は得られません。
例えば、ワックス・アップにしてもポーセレンの築盛にしても、彼らにとって分かり易く、また、誰が行っても平均的な技術レベルの結果がでるようなシステム化した方法が必要だと思います。
そういう点ではCAD/CAMによる方法は手っ取り早くある程度の結果がでるひとつの方法だと思います。
思えば、CAD/CAMが初めて歯科に応用されたのを私が知ったのはドイツのラボに勤務していた1985年です
その頃、そのラボの一部の歯科技工士が「俺たち歯科技工士はまもなく必要でなくなる」と騒いでいたことが今も記憶に残っています。
その時からすでに32年が過ぎ、確かにCAD/CAMの機能は当時では想像できないほどに進化しています。
しかし、やはりCAD/CAMは今でも、歯科技工を行う上でのひとつのツールでしかないと私は思っています。
たとえCAD/CAMがさらに進化したとしても、基礎知識や技術を持ち、応用能力がある歯科技工士が必要なくなることは今後もないだろうと思っています。

王譯平
2017/10/04 23:23

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