流浪の歯科技工士・王譯平・・・老馬之智

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zoom RSS 20年前に提言された“21世紀歯科技工グランドデザイン”

<<   作成日時 : 2018/06/07 14:48   >>

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日本に預けている歯科技工関係の資料や家財を整理するために短期間日本へ一時帰国しました。
1970年代に読み漁っていた咬合に関する専門書や、歯科技工誌の“QDT”および“月刊歯科技工”に掲載された私の論文別刷りなどを整理していましたら、“21世紀歯科技工グランドデザインへの提言”という別刷りを見つけました。
平成10年(1998年)12月1日発行の“月刊歯科技工”に特別寄稿された論文の別刷りです。
“技工未来の草案フォーラムより”という副題があり、加藤敏明、伊集院正俊、川島哲、それに私、川崎従道による4名の共同執筆となっていますが、この論文の実質的な執筆と構想は加藤氏によるものです。
当時、彼は40歳前後の若さだったと思います。

伊集院氏は日本歯科技工士会(日技)の副会長や専務理事を務められた方で、川島氏も埼玉県の歯科技工士会の副会長を務められたことがある方です。
また当時、彼ら3名は日本の歯科技工界をどのように改革すべきか、QDT誌上で数回、対談も行われていますので、加藤氏の構想には、当然、伊集院氏と川島氏の助言や考えも含まれているものと思われます。

加藤氏とは、国際シンポジュウムにおいて同じテーマで講演したことが縁で知り合い、その後、合計400通ほどのメールのやりとりをして“技工未来の草案フォーラム”の事務局を引き受けることになりました。
その関係で、私も共同執筆者のひとりとなっているのです。
実は、約6年間のスイスおよびドイツでの滞在を終え、その後、歯科器材メーカ-の製品開発部に技術顧問として7年間在籍していましたので、その当時は、日本の歯科技工界のことに関しては全く無知で、“7:3問題”が何かさえ知らない状態でした。

“21世紀歯科技工グランドデザインへの提言”が“月刊歯科技工''に掲載された1998年の春頃から、私たち4名は“フォーラム4人組”と当時の日技役員の方たちから揶揄されながらも、全て私費、手弁当で九州から北海道までの7カ所でグランドデザインをベースにした“技工未来の草案フォーラム”を開き、若い人たちと歯科技工界をどのように改革すればよいか討論の場をつくりました。

その当時、私は少人数のラボを開設していましたが、フォーラムの趣旨を理解できずに誤解された人たちから数回、匿名で嫌がらせの電話を受けたことがあります。
フォーラムの事務局を引き受けただけの私に対してさえ、そのような状況でしたので、グランドデザインのベースを作った若い加藤氏に対しては、相当な圧力や嫌がらせが加えられたようです。
“21世紀歯科技工グランドデザイン”は将来を見据えた奥深い内容で、かつ広範囲におよびましたので、当時の多くの歯科技工士からの理解を得ることは難しかったようです。

20年前当時、72校あった歯科技工学校が現在では53校となり、さらに募集停止や廃校が予定されている学校が4校あるといわれます。
それに、今年、平成30年に実施された歯科技工士国家試験の合格者は、わずか902名とのことで,20年前の3分の1にも満たない状態となっています。
また、海外委託の問題、CAD/CAMの普及など、20年前と現在では状況が全く違っています。

そのため、20年前に提言された“21世紀歯科技工グランドデザイン”がそのまま通用するとは思いませんが、加藤氏をはじめとする当時の若い人たちの改革に対する熱意や考えを、現在の若い人たちにも知って欲しいという思いから、私の独断で、本ブログに転載させていただきました。

なお、“まえがき”と“まとめ”はそのままに転写いたしましたが、本文は割愛させていただき“グランドデザインへの提言の項目”だけを転写させていただきました。
本文に興味がおありの方は、出版社にお問い合わせいただければと思います。

改革に対する思いを持つ若い人達の声が、わたしのもとにもメールなどを通して届くのですが、具体的な提言や対策および行動が伴っていないように思われます。
20年前の加藤氏を中心としてまとめられた“21世紀歯科技工グランドデザインへの提言”が、歯科技工界の改革を志す現代の若い人たちに、何らかの参考になればと願っています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


21世紀歯科技工グランドデザインへの提言
----技工未来の草案フォーラムより---

加藤 敏明(Laboratory 0f Oral Principle)
伊集院正俊(伊集院ポーセレン研究所)
川島 哲(ユニデント)
川崎 従道(エムリヴェール)


はじめに

まだ蒼き頃、酒瓶を間に、友と夢を語り、神を語り、世界を語り、日本を語っていた。
若輩ながらわが祖国の将来を真剣に憂い、語ることに何のてらいもなかったように思う。
口角泡を飛ばしながらの激論は朝まで続いた。
いつの頃だろうか“正義”という言葉も“論争”という言葉も “わが国日本が”という言葉も会話からなくなったのは……。

『自分には関係ない、政治など関係ない、考えたって仕方ない、今日さえよければ、自分さえよければそれでよい』いざ状況が悪くなったときに、そんな思いが“あいつが悪い” “政治が悪い” “国が悪い”と不平に変わる。
“彼らは何をしているのか”と不満に変わる。
まさにそれが今の歯科技工士界にもあるように思われる。
不平、不満、愚痴、諦め、他者への転嫁、嫉妬、困惑、そして固執、自分の生活が脅かされることにより、このような概念が生まれてくるのは当然のことである。

しかし、立ちすくんでいても仕方がなく、神の御手に任せていれば救われるわけでもない。
神でさえ努力しない者に救いの手は差しのべない。
現状についての不満、反省、危惧、希望については述べられてきたが、達成のための計画作りが述べられたものは少ない。

筆者らは歯科技工界においては、技工料金の制度化が今の現状における改革の一番の近道であると考えるが、それだけでは計画といいがたい。
制度化を行うためには歯科技工士界全体の大きな改革、すなわち『グランドデザイン』の創造が必要となる。

以下に歯科技工士の歴史と現状を紐ときながら、筆者らの考えるグランドデザインへの提言を行いたい。
このグランドデザインへの提言が歯科技工士一人一人の討論のきっかけになったら幸いであり、現実味のあるグランドデザインへの構想のもと、実現させるために努力し、現実化することを望んでやまない。


グランドデザインへの提言の項目

◆歯科医療技工振興財団法人設立の提言

1.指定試験機関の設置
2.開設指定許認可機関の設置
3.労働基準法遵守のための歯科技工所への勧告・閉鎖指示
4.定年退職共済制度
5.歯科技工料の請求・送金
6.歯科技工料の不正請求歯科技工所への勧告・閉鎖指示
7.歯科技工の一般への啓蒙・宣伝
8.財団法人運営費用
9.財団法人の透明化・情報開示の明記
10.財団法人の構成員の基準
11.全国聴覚障害歯科技工士中央協議会(仮称)の設立
12.歯科技工士国民健康保険の開設

◆社団法人 日本歯科技工士会の変革

1)日本歯科技工士会役員報酬の定款改正と明確化
2)情報公開の義務
3)外部監査の必要性
4)歯科技工士会員のための開かれた会運営への改革

◆日本歯科医療技工研究会の設立

@ 年次学術大会(年1回、総会と併催)
A 各支部によるシンポジウム
B 学術会誌の発行(年1回)
C ニューズレターの発行
D ホームページによる情報提供
E 各マスコミ・メディアを通しての国民への情報提供
F 歯科医療従事者のための臨床的知識統一の卒後教育
G 歯科医療従事者のための経営学の研究
H 国民のための歯科医療相談室の設置

まとめ

このグランドデザインは、三つの柱からなりたっている。
一本目の柱である歯科医療技工振興財団法人は経済の安定と秩序を創り、二本目の柱、社団法人日本歯科技工士会は歯科技工士同士の相互関係を確立し、三本目の柱の日本歯科医療技工研究会は歯科技工士の医療貢献をする機関と考えた。

以上が筆者らの考える「21世紀歯科技工グランドデザイン」への提言である。
ただし、ここで示された財団法人は第二歯科技工士会のようなものではないことを明言しておく。

平成8年で歯科技工免許取得者は8万人を超えた。
そして毎年3,000弱名の免許取得者が増えていく。
就職率は年々減り、50%を割り込んだといわれている。
まさに現状では飽和状態といえる。
今、歯科技工士ひとり一人が積極的に歯科技工界に対して関心と関わりをもち、全員で考え行動する必要がある。
誰かが既得権を誇示するようなことではこの現状を乗り越えてはいけない。

毎日のように歯科技工士会を離脱していく会員の多くは、利点のなさと会費の支払いの困難を訴えている。
しかし力の弱い歯科技工業界の人々が孤立していけば、改革の波にさらされることになりはしないかと危惧される。

何としてでも日本国民のためにも歯科医療界のためにも歯科技工界を整え、整合性をもたなければならない。

また筆者らは医療界の「医薬分業」に対して歯科界の「歯技分業」を強く望む。
歯技分業というと、アメリカのような完全な自費制度の確立やドイツのような方式をとっていくのか聞かれることがあるが、そのどれでもない“日本式”を確立したいと考えている。
そして筆者らの考えるグランドデザインでは、現在働いている全ての歯科技工士が救えるようなものになると思っている。

また、“どの部分を切り捨ててどの部分を残すか”などという問いに対しての答えは、一切の切り捨ても考えていない、となるだろう。

将来、高度化された技術を持つものとそうでないもののなかで分業化が進んでいくと思われる。
分業化が進めば、現状で働いている5万人の歯科技工士でも決して多くはなく、また医療が高度になればなるほど歯科技工士数は増やさざるを得なくなるだろう。
このような現状を鑑みて、全てを救い、また将来の歯科技工士の質を高め、国民に貢献するための方法論として『歯技分業』を提唱したい。
『歯技分業』は経済の分離独立と国民歯科医療に対する義務と責任の分担を意味する。
そのためのグランドデザインへの提言と理解していただくとわかりやすいだろう。

筆者らの提言したこのグランドデザインが決して正しいわけではないし可能とも限らない。
不可能にも見えるだろう。
しかしすでに立ち上がるか流されるか二つに一つしか道はないところまできている。
本稿とは違った形でも、現状の歯科技工界を憂いる人たちが集い、歯科技工界の現状に即したグランドデザインを確立すべく、各々が真剣に考え、語り合う時期にきているのではないだろうか。
誰も目標のないところには進めないのだ。
みんなで目標をもち、一丸になって進もうではないか。
まだ見ぬ未来のために・・・・・・。














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内 容 ニックネーム/日時
 ご隠居様、本文を読んで忘れていた過去を思い出しました。ご隠居様の文章は優しくて鋭く、本当に頭の良い方だと再確認いたしました。私の知る限り、技工界でもっともすぐれた頭脳の持ち主です。そんな方と一時でも同じ時、同じ道を歩むことができたことを誇りに思っています。
 その若造も今や還暦を過ぎ、同窓会に出席すれば、退職、年金、病気の話で盛り上がっています。先日も会社の会議で「社長の葬儀は社葬ですか?」と聞かれたので、私は「そんなにお金のかかることはしないで、家族葬でお願いします」と話したばかりです。
 20年と言う歳月は全てを変化させるには十分な時間であり、もはや「21世紀歯科技工グランドデザイン」も大正文学かSF小説を読むかのごとくです。
 現在の日本は少子化、高齢化、長期のデフレであり、日本技工界も同じように、、なり手不足、高齢化、長期の低料金でここまで疲弊して、やっと大きな変革期を迎えようとしています。変革期には先を読んだ人間が生き残ります。ご隠居様も健康に留意なさって、日本技工界がどう変化していくのかもう少し見つめていて下さい。
としじい
2018/06/07 18:17
としじいさんへ
私についての過分なご評価をいただき恐縮いたしております。
日本で資料整理をしていたとき、としじいさんが書かれた“はじめに”と“まとめ”を読み心打たれたものですから、現在の若い人たちにもぜひ読んでもらって、何かを感じてもらいたいと思い、勝手ながら本ブログに掲載させていただきました。
“はじめに”の最後の5行を写し忘れていましたので、先ほど追加修正いたしました。
としじいさんより17歳近く長生きしていますので、だんだんと物忘れも多くなってきているようです。
王譯平
2018/06/07 22:03

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