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zoom RSS 郭暁琴の製作よるインプラントを含む咬合再構成の症例

<<   作成日時 : 2018/08/21 00:00   >>

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郭暁琴(グオ・シアオチン)は、医療専門大学3年生の時に弊社Lラボの実習生として採用されました。
中国では、医科大学や医療専門大学および職業訓練学校における口腔修復工芸科(日本で言う歯科技工科)の学生は、3年生になると実習生として歯科技工所で1年間の技術訓練を受けなければならないようになっています。
郭暁琴は、その実習期間の半ばを過ぎた頃から私の助手として配属されましたので、すでに、2年半ほど私の助手をしていることになります。
中国の医療専門大学の多くは、2年間の教育期間中は理論を中心とした授業が行われています。
郭暁琴が卒業した医療専門大学も例外ではなく、2年間、毎日講義だけが行われ、技工に関する実技の指導や訓練は全く無かったそうです。
そのため、弊社Lラボの実習生として来た時は、当然ながら、ワックス・アップも石膏を用いた歯型彫刻の経験すらありませんでした。

図1
今年、24歳になった郭晓琴です。

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医療専門大学を卒業して2年が過ぎ、24歳となった郭晓琴は、今では、クラウン・ブリッジの症例に関しては、金属焼付ポーセレンをはじめ、e-maxプレスやジルコニアをベースにしたオール・セラミックスの臨床ケースも任せることができるレベルになっています。

図2
弊社Lラボの川崎歯科技術研修センターとその臨床部門である川崎工作室です。
中国国内からだけでなく、日本やドイツからの見学者も来られます。

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私が指導している弊社Lラボの川崎歯科技術研修センターとその臨床部門である川崎工作室は、現在、22名の牙科技師(日本で言う歯科技工士)と4名の医療専門大学実習生からなっています。
19歳から24歳の若い子達で、優秀な女性が多く、男性は26名中4名にすぎません。
主に、ジルコニアをベースにしたオール・セラミックスによるクラウン・ブリッジの症例を製作していますが、彼らの技術もかなり上達し、安定したレベルになってきましたので、インプラントの症例も引き受けることにいたしました。
その最初のケースを郭暁琴に製作させました。
まだまだ技術的に未熟な点も多々ありますが、その製作過程にそってご覧いただきたいと思います。

北京における国立の歯科医院は大きい規模の所が多く、医院内の歯科技工室に勤務する歯科技工士だけでも100人前後いるといわれます。
本症例はそのような医院からの依頼によるものです。

図3,図4
咬合器に装着された上下顎の作業模型には、それぞれに6個のマルチユニットアバット・レプリカがあり、ネジ固定式の上部構造による咬合再構成の症例です。

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図5〜図7
医院内の歯科技工室で模型が製作され、すでに口腔内で試適済という蝋義歯をもとに咬合器への装着がなされていました。
咬合器はドイツAMANN Girrbach社製全調節性咬合器が使用され、上顎模型はフェイスボー採得時の記録をもとに装着されているとのことでした。
上部構造のブリッジ・フレームはチタン合金で製作し、コンポジット・レジンによる前装をという指示でした。
また、上顎歯の排列や唇頬側の豊隆をできるだけ忠実に再現して欲しいとの指示もありました。

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図8、図9
排列状態をみますと、中心咬合位で上下顎前歯間に約1mmの空隙があり、前歯誘導路も確立できていませんでしたので、担当医の了承を得て、ワックス・アップによって下顎前歯の排列を修正しました。

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図10
前方運動位における前歯の接触状態です。

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図11
右側方運動位における前歯の接触状態です。

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図12
左側方運動位における前歯の接触状態です。

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図13、図14
パテ状シリコーン印象材を用いて上顎歯の排列位置の記録をしました。

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図15
上部構造のブリッジ・フレームを製作するためには、まず、ダブル・スキャン作業に用いるブリッジ・フレームの原型を即時重合レジンで製作する必要があります。
そのためにはまず、蝋義歯の全体を即時重合レジンで複製します。
その後、コンポジット・レジンによる前装のスペースをカット・バックしながらブリッジ・フレームの原型を製作いたします。
この図は、流し込み法によって、蝋義歯の排列状態や形態の全体が即時重合レジンで複製された状態です。

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図16〜図19
コンポジット・レジン前装のためのスペースがカット・バックされた即時重合レジンによる上部構造のブリッジ・フレーム原型です。

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将来、コンポジット・レジンの摩耗によって生じると思われる垂直咬合高径の低下を防止するために、最後臼歯部に金属による咬合接触部を設けています(図17の赤矢印部)

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図20、図21
その後、CAD/CAM操作になるわけですが、医院で咬合器装着された模型はスプリット・キャストになっていないため、模型の厚さに問題があり、このままではスキャンできません。
従って、咬合器から模型を取り外して薄くする必要があります。
そのためには、前もって上顎模型の位置と上下顎の位置関係を記録しておく必要があります。
ここでは、パテ状シリコーン印象材を用いて記録しています。

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図22
CAD/CAM操作は弊社LラボのCAD/CAM部に全て任せています。
私自身、このレベルのダブル・スキャンや加工技術になると熟知してなく、残念ながら詳しい説明はできません。

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図23,図24
レジンによるブリッジ・フレームがCADによってスキャンと設計が行われ、CAMによって切削加工されたチタン合金による上下顎のブリッジ・フレームです。

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図25〜図27
金属とコンポジット・レジンの接着にはメタルプライマーが使われますが、より確実に接着させるためにメタルの表面全てに小さな刻みを入れて機械的な結合ができるように処置しています。
アバットメント・レプリカと上部構造のブリッジ・フレームが精密に適合しているのがわかります(白矢印部)。

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また、コンポジット・レジンの摩耗による垂直咬合高径の低下を防止するための金属による咬合接触部も適合しているのがわかります(赤矢印部)。

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図28
1970年代にミリング・テクニックによって私が製作した臨床例のひとつで、IRVテレスコープ・システムの内冠です。
当時、ミリング時に現れる鋳造巣に悩まされたり、蝋着による狂いによってバーで連結した内冠がチッピングしたり、内冠と外冠が適合せずに何度も鋳造や蝋着を繰り返したりと、とても苦労した思い出があります。

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現在では、CAD/CAMの研削加工技術によって均質な材質で高い適合精度のブリッジ・フレームを製作することができます。
高価な白金加金を使う必要もなく、生体への適合性も良いといわれるチタン合金やジルコニアなどの材料を用いて短日時で製作できます。
また、インプラントの普及により、ミリング・テクニックを用いた複雑なテレスコープ・システムによる義歯やアタッチメント義歯を設計する必要もなくなりました。
時代はすっかり変わりました。

図29
コンポジット・レジンの築盛を始めるにあたり、前もって製作している上顎咬合面のシリコーン・コアを用いて、透明レジンで前歯切端部や臼歯頬側咬頭の位置を再現します。

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図30、図31
中国ではクラウン・ブリッジの前装のために硬質レジンやコンポジット・レジンが使われることはほとんどありません。
クラウン・ブリッジに関しては、そのほとんどがポーセレンによるものです。
そのため、郭暁琴もコンポジット・レジンの築盛方法は初めての体験でしたので、とても悩みながら作業をしていました。

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図32
コンポジット・レジンによる前装がすべて終わり、前もって製作された咬合面のシリコーン・コアに適合させ、チェックしているところです。

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図33〜図36
郭暁琴によって完成された上下顎インプラント上部構造による咬合再構成の症例です。
口腔内における写真は依頼先の医院からまだ頂いていませんが、入手出来しだい、追加掲載させていただく予定にしています。

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弊社Lラボの川崎工作室では、ポーセレンやインプラントなど、日本における自費の技工物は非常に多く、仕事量が不足するということはありません。
日本の若い歯科技工士の人たちも中国で武者修行をされたらとも思うのですが、中国のラボでは給料が安く、従業員の宿舎は一部屋6人から8人の共同生活をしいられますので、とても若い日本の人達には無理でしょう。
私も勧めたくはありません。

ちなみに、郭暁琴の現在の給料は月額4,500元(日本円で72,000円)です。
そこから社会保険料などが差し引かれ、約4,000元(約64,000円)の約半分を農家である実家へ仕送りしているそうです。
昨年、医療専門大学を卒業して川崎工作室で働いているスタッフ達の給料も高くはなく、月額2,500元(約40,000円)とのことです。
彼らも地方の農村出身者が多くを占めていますので、社会保険料を差し引かれた残りの約半分を実家に仕送りしているようです。

世界第二の経済大国と言われるようになった中国でも、首都北京と地方の農村ではまだまだ貧富の格差が大きいように思われます。
少しでも早い期間に、少しでも高い技術レベルの歯科技工ができるようにしてあげて、少しでも高い給料が得られるようにしてあげたいと思いながら指導している今日この頃です。

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